官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「貴裕さん元気そうでよかったわ」

 忙しそうだなというのは、日々の電話の様子から伝わっていた。出会ったばかりの頃の、疲れを色濃く滲ませた姿も覚えているだけに、心配していたのだ。

「忙しかったけど、ご褒美があったからね。頑張れたよ」

 それは……私と貴斗が会いに来たこと?

「ごほうび! パパごほうびもらったの?」

「ああ、最高のご褒美をもらったよ」

「いいな~、ぼくもごほうびもらいたい!」

「そうか、貴斗は何が欲しいの?」

「ぼく? えっと、飛行機と電車のおもちゃがほしい!」

「わかった。貴斗がこっちにいるうちに一緒に買いに行こうな」

「ほんと? やった~」

 すっかり親子らしくなったふたりのやり取りを、微笑ましく眺めていると、それまでふたりの様子を黙って見ていた菅野さんが口を開いた。

「お話中失礼します。本日の業務は終了です。どうぞ今日は早めにご帰宅ください」

 いわゆる定時には、少し早い時間だ。それなのに帰るだなんて。社長が仕事よりプライベートを優先させていいはずがない。

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