官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 菅野さんのおかげで、暗くなる前に貴裕さんのマンションに着くことができた。

「わあ、パパのおうち広ーい」

 部屋に入るなり、貴斗は探検に出かけた。あっちの部屋のドアを開け、こっちのドアに顔を突っ込みやりたい放題している。

「貴斗待って。勝手に開けちゃダメ」

 必死に追いかけまわすけれど、貴斗は私の手をさっとかわし、逃げてしまう。

「構わないよ、好きにさせてあげて。そう遠くないうちにここが貴斗のうちになるんだし」

 正式に東京に出て来たら、しばらくはこのまま貴裕さんのマンションに住もうということになっている。

 部屋数は十分すぎるほどあるし、このマンションのある区画一帯がひとつの街のようになっていて、徒歩十分圏内でひと通り買い物もできるし、病院や学校などだいたいの施設が揃っている。貴裕さんから話を聞けば聞くほど、子育てにはうってつけの土地だと思った。

「でも、お仕事の道具とか触っちゃダメな物もあるんじゃないの?」

 貴斗も以前よりだいぶ言葉を理解するようになったとはいえ、まだ幼児だ。夢中になって気がついたら部屋中におもちゃをばらまいていたなんてこともある。

「貴斗、ちょっと来て」

 心配していたら、貴裕さんは貴斗を呼んだ。パパ大好きな貴斗は、すぐに飛んで来る。

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