官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 長旅でふたりとも疲れているだろうからと、夕食は中華のデリバリーにしてくれた。貴斗も大好きなエビをたくさん食べて、とても満足していた。

 さすがに疲れたのだろう。またはしゃいで寝ないかなと思ったけれど、貴斗は貴裕さんと一緒にソファーでテレビを見ているうちに、眠ってしまった。

「ぐっすりだな」

「うん、これじゃ朝まで起きないかも」

 すぐ様子を見に行けるよう、リビングの隣の部屋のベッドに貴斗を寝かせた。

「美海もお疲れさま。ちょっとゆっくりしようか」

 貴裕さんはキッチンに消えたかと思うと、マグカップをふたつ持って現れた。

「これ、カモミールティー?」

「そう、懐かしいだろ」

 ラパンで働いていた頃、仕事が忙しくて不眠気味だったという貴裕さんに渡したハーブティーだった。今でも自分で買って愛飲していると言う。

 ソファーに並んで座り、久しぶりにゆっくりふたりで話をした。

「雄介さんがそんなことを?」

「うん、私には欲がないって言うの」

 飛行機の中で、雄ちゃんから言われたことが、頭から離れなかったのだ。

「確かにそうかもしれないな」

「えっ、そう?」

 マグカップを置いて、貴裕さんが頷く。

「俺が美海に惹かれたのは、そういうところでもあるんだ。よく人のことを見ていて気が利く。でも決して押しつけがましいわけじゃない。人に自然に優しくできるんだよ」

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