官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「じゃあさ、美海は俺のことちゃんと自分のパートナーとして見てるか?」

「えっ?」

「こんなこと言うのまるで貴斗に嫉妬してるみたいで嫌なんだけど……」

 貴裕さんは本当に恥ずかしそうに一度下を向いた。一瞬置いて、またパッと顔を上げる。

「美海は、俺のことを貴斗の父親としてしか見てないんじゃないかって思う時があるんだ」

「そんなこと……」

 言いかけて、口を噤んだ。今の私の全ての判断基準は貴斗だ。それは自覚がある。ひょっとして私は、貴裕さんのことも、貴斗を通してしか見ていなかった?

「もちろん貴斗は大事だけど、美海自身の気持ちだって大事だろ。貴斗のことは抜きにして、俺は美海にとって一生添い遂げたいと思える相手か?」

 一緒にいられたのは、ほんの僅かな時間だった。それでも私は、貴裕さんとの日々を支えに今まで生きてきた。

「母親としての美海も尊敬してるし、大好きだけど、俺はそれ以上に美海自身に惚れてるんだ。美海も同じ気持ちだって思っていいのか?」

 ずっと、大好きだった。離れた後も、忘れたくても忘れられなかった。三年かかっても見つけ出してくれて、本当は叫びたいほど嬉しかった。

 知らない間に、自分の心を縛り付けていた。私は貴斗の母親なんだからと。自分の気持ちだけで、未来を決めてはいけないと。

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