官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「……貴斗の父親だからじゃない。私も、貴裕さんだから……あなただからずっと一緒にいたいと思ったの」

「だったらちゃんと俺を欲しがれ」

 どちらからともなく、手を伸ばした。互いの体をきつく抱きしめ合う。これ以上離れている時間が惜しくて、唇を押し付け合った。

 どうして私は、今の今まで忘れていられたのだろう。

 一刻も早く、あなたのものになりたい、私だけのものにしたい焦りにも似た強い気持ち。

「美海、抱きたい」

 私だって同じ気持ちだと、声に出さずに頷いた。

 でも、隣の部屋には貴斗がいる。

 私の躊躇いを、感じ取ってくれたのかもしれない。貴裕さんは無言で私を抱き上げると、別の部屋へと続くドアを開けた。

 貴斗に入ってはダメだと教えていた部屋だった。デスクの上には本や書類が山積みになっていて、部屋の壁側にダブルサイズのベッドが置いてある。

 そっと私をベッドに横たえる。そのまま私の体を、シーツに縫い止めた。

「好きだよ、美海」

 彼の手が髪をなで、私の頬に触れる。さっきまでの荒々しさはなりをひそめ、静かに唇が降りて来た。啄むだけのキスが、徐々に深くなっていく。

 情欲を煽る熱いキスに全てを忘れ、私は一夜中彼に溺れた。

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