官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「俺が用意したのは、これとチャイルドシートくらいだよ。あとは美海と一緒に見て決めた方がいいと思って」

 一緒に過ごした一週間のうち、目についた大きなものだけとりあえず買っておいてくれたようだ。こまごまとしたものを揃えるのは、貴裕さんには難しかっただろう。

「ありがとう、これだけでもだいぶ助かる」

「これから少しずつ揃えていこう」

「ねえパパ、ふりかけはある?」

 すかさず貴斗が言う。

「あー、ふりかけも買ってなかったな。今日買いに行こうな」

「うん!」

 椅子に座ったままばんざいをする貴斗の頭を、貴裕さんが愛おしそうに撫でていた。

 三人での生活が、徐々に形作られていく。そのことがたまらなく嬉しい。

 お腹が減っていたのか、貴斗は珍しく朝から食欲旺盛だった。「もうちょっとゆっくり食べなさい」とつい言いたくなるほど。

「貴斗張り切ってるなあ」

「うん、ぼくいっぱいたべてパパみたいに大きくなるよ」

「そっか、パパも貴斗に負けないようにたくさん食べなきゃな」

 朝はあまり食欲はないという貴裕さんが、貴斗の手前、頑張ってパンを口に運んでいる。

「子供って朝が早いし、食事も三食時間きっかりに食べるし、貴裕さんの生活スタイルを狂わせちゃうかも」

 多忙な貴裕さんには、自分なりの生活リズムがあるだろう。なるべく邪魔にならないようにするつもりだけれど、負担を感じさせたくない。

「大人が子供に合わせるのが普通だろ。変な気は使わないでくれよ。俺は、君達と暮らすのを本当に楽しみにしてるんだから」

 テーブル越しに、貴裕さんが私の手をそっと包む。私を見て、優しく微笑んでくれた。

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