官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 休日にもかかわらず、私や貴裕さんが早起きしたのには理由がある。いよいよ今日、貴裕さんの実家に行って、お母様から結婚の許可をもらうのだ。

「貴斗、今日はこのお洋服着てね」

 いつもの着やすさ、動きやすさ重視のラフな服とは違い、用意したのはよそ行き用のシャツとパンツ。今まで着けたことのないサスペンダーもある。

「えー、ぼくでんしゃのふくがいいなー」

 毎日のように着ているお気に入りのトレーナーを、鞄の中から見つけて勝手に着ようとしている。

「貴斗~、お願い。ほら見て、今日はママもおしゃれしてるよ」

 私も思い切って新調したワンピースを着ている。カジュアルすぎないようジャケットも羽織り、控えめにアクセサリーもつけている。私の格好を見た時は、可愛いって言ってくれたのに。いざ貴斗にもよそ行きの服を着せようとすると、ぷいっと横を向いてしまう。

 どうしよう、約束の時間が迫っている。焦っていると、とっくに着替えを済ませ、準備万端の貴裕さんが姿を見せた。

 結婚の挨拶と言っても、実家に顔を出す貴裕さんはチノパンにセーターと私達に比べたらぐっとカジュアルな格好だ。でもそんな何気ない格好も、背も高くスタイルもいいおかげで、雑誌から抜け出てきたかのようにかっこいい。

< 197 / 226 >

この作品をシェア

pagetop