官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「……美海、すごく綺麗だ」

 貴裕さんは普段とは違う私に目を留めると、感嘆のため息を漏らした。

「あ、ありがとう。貴裕さんもすごく素敵」

 ストレートに褒められて嬉しい、けれど照れてしまう……。

「なんだ、貴斗はまだ着替えてないのか?」

「ぼくでんしゃのおようふくがいいんだよね」

 ほっぺたをぷっと膨らませ、唇を尖らせた貴斗が言う。

「さっきからこれで、なかなか着替えてくれないの」

「どれ、貴斗の服も見せて」

 貴斗用の服をハンガーに吊るしたままの状態で貴裕さんに渡した。

「おっ、貴斗今日の服かっこいいじゃないか。パパみたいにお仕事に行く人みたいだ」

「……ほんと?」

 貴斗の目がきらっと輝いた。パパのことが大好きな貴斗は、スーツ姿の男性にどうも憧れを抱いているようなのだ。島には郵便局などに制服姿の人はいても、スーツを着ている人なんてほとんどいない。見慣れていないこともあってか、ものすごくかっこよく見えるらしい。

「ぼくやっぱりこっちの服にしようかな~」

 パパみたいだと言われて、悪い気はしなかったようだ。握り締めていたトレーナーをぽいっと床に投げると、貴斗は白いシャツに手を伸ばした。貴裕さんに手伝ってもらって、パンツ、靴下、サスペンダーと次々に身に着けていく。

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