官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「貴裕さん、ありがとう。貴斗、おいで」

「はい、ママ」

 私が手を伸ばすと、貴斗はあっさりと私に抱き着いた。名残惜しそうな顔をしている貴裕さんに、ごめんね、と目で合図を送る。

「貴斗、雄ちゃんが言うようにママはまだお仕事中なの。素子おばちゃんのおうちで待っててくれる?」

「いやぁ、たかとママがいい」

「貴斗、お願い。お仕事が終わったら、ママがご本読んであげるからね」

 貴斗の背中をポンポンと優しく叩きながら、そう言い聞かせる。

「ママすぐくる?」

 まだ口はへの字で今にも泣きそうな顔をしているけれど、貴斗も少し落ち着いてきたみたい。

「うん、すぐ貴斗のところに行くからね」

「……わかった」

 貴斗はうんと頷くと、今度は「ゆうちゃんだっこ!」と手を伸ばした。切り替えの早さに雄ちゃんも苦笑している。

「はいはい、おいで貴斗」

「はーい」

「……貴斗!」

 貴裕さんが名前を呼ぶと、貴斗は「おにいちゃんばいばい!」と屈託のない笑顔で手を振った。

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