官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 貴裕さんの案内で、お母様が待っているというリビングへ向かう。玄関から続く廊下がやけに長く感じた。

「貴裕、美海さんいらしたの?」

「ああ、連れてきたよ」

 貴裕さんに促され、リビングの中に入る。

「あなたが美海さん? はじめまして、貴裕の母です。来てくださって嬉しいわ」

 出迎えてくれたのは、女性にしては背が高くすらっとした印象の女性だった。快活な笑顔を私達に向けている。

「初めまして。須崎美海と申します。今日はお時間を取ってくださりありがとうございます」

 貴裕さんは怒られるかもなんて言っていたのに、お母様はとても友好的だった。私に柔らかく微笑むと、再び口を開く。

「いつだったか、私の誕生日の花束を作ってくださったでしょ。本当に素敵で、貴裕に色々話を聞いたの。自分でも買いに行きたいって言ってもなんだかんだ止めるからおかしいと思ってたら」

 そう言って、ちらりと貴裕さんの方を見る。貴裕さんは知らんふりを決め込んでいる。

「どうにかしてあなたを落とそうと必死だったみたいね。私に冷やかされるのが嫌だったみたい」

「そ、そうだったんですか?」

 初めて聞く話に、顔が熱くなる。貴裕さんがついでにお母様の分も買っていってたのだと思っていたけれど、ふたりの間でそんなやり取りがあったなんて知らなかった。

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