官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ずっと連絡もせずにごめんなさい。実は色々事情があって、お店を辞めた後すぐに故郷の島に戻ったんです」

「ひょっとして、そちらは」

 瑞季さんが私の後ろに立つ貴裕さんと貴斗をちらりと覗く。

「はじめまして、ですよね。妻がお世話になりました。美海の夫の時田です。そしてこちらが息子の貴斗」

「えっ、それじゃあ……」

「ええ、あの時お腹にいた子です」

「よかった、無事に生まれたんですね」

 初めて会う人に驚いたのか、貴斗は貴裕さんの首にしがみついたままじっとしている。貴裕さんが、貴斗の背中をそっと撫でた。

「ほら貴斗、さっき練習したろ。お名前言えるかな?」

 貴斗は貴裕さんから体を離すと、瑞季さんの方を見た。瑞季さんは期待の眼差しで貴斗のことを見ている、

「……ときたたかとです。三さいです」

「うわぁ、可愛い! 貴斗くん上手に言えるのね」

 ついと近寄った瑞季さんにびっくりしたのか、貴斗はまた貴裕さんの首にしがみついた。そんな貴斗に、貴裕さんが苦笑いを浮かべている。

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