官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「貴斗は俺の子だよな?」
部屋に入るなり、貴裕さんはそう私に聞いてきた。どう答えるべきか迷っているうちに、返事を逃してしまう。貴裕さんは、それを肯定と受け取ったらしい。ネクタイを緩めながら座布団の上にぺたんと座ると、「そうか、あの子が」と呟いた。
「貴裕さん、やっぱり知ってたのね」
「ああ、美海の居場所と同時に貴斗のことも知った。……こんなに長い間、ひとりにしてごめん。君と連絡が取れなくなってすぐ方々手を尽くしたけど、どうしても見つけられなかったんだ」
「そう……」
貴裕さんが、私のことを探していた。その事実に、改めてホッとしている自分がいる。
勝手に自分でいなくなったくせに、貴裕さんが私を追ってこないことに、理由を探していた。
きっと、黙っていなくなったことを怒っているのだろう。それか、私のことなんてとっくに忘れてしまったのかも。心のどこかで、『貴裕さんはそんな人じゃない』と否定をしながらも、過去の私は、そう思い込むことで、気持ちに区切りをつけようとしていた。
「……だけど、美海はもうとっくに前に進んでたのかな」