官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「……あの頃、そんなことがあったんですね」

「ラパンが閉まったのも、結局は私のせいだった。瑞季さんにも苦労をかけてしまって本当にごめんなさい」

「それは美海さんが謝ることじゃないですよ!」

 ラパンが突然閉まることになった経緯を話すと、瑞季さんはとても驚いていた。

「それに、私が今店を持っているのは美海さんのおかげです。ラパンが大好きだったから、自分でもあんなお店を作りたいと思って」

「そうだったんですね」

「ラパン時代の常連さんも、戻ってきてくださったんですよ。みんなお店がなくなって寂しかったみたいで、喜んでくださってます」

 あの頃の自分が必死にやってきたことは、無駄じゃなかった。それを知れただけで、もう十分だと思った。

「美海さん、結婚式は?」

「その話は、まだこれからなんです」

 事情が複雑だし、すでに貴斗もいるからと式は挙げずにいるつもりだったけれど、貴裕さんのお母様にも、けじめだからと結婚式を挙げることを勧められていた。

「前向きに考えてるってことですか?」

「それは、ええ」

「それなら、私に結婚式のブーケを作らせてもらえませんか?」

「お願いしていいんですか?」

「ぜひ私に作らせてください!」

 それでも、まだいつになるかもわからない話だ。詳細が決まり次第連絡することを約束して、私はその日、瑞季さんの店を後にした。

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