官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「美海、こっち」

 ブライダルコーナーに向かうと、貴裕さんはすでに着いていた。

「貴裕さん、早かったのね」

「ああ、美海のドレス姿が楽しみで」

 思わず赤面してしまうようなことを、貴裕さんは平気で口にする。そのたびに私は息も止まりそうになる。

「仲がよろしいんですね」

 コーディネーターさんも顔を赤らめているのだが、貴裕さんは気にする様子もない。それどころか、甘い言葉を吐かれるたびあたふたしてしまう私を見て、面白がっている節さえある。

「ご案内いたします。こちらへどうぞ」

 案内されたのは、ブライダルコーナーの奥にあるドレスルーム。壁に沿ってたくさんのウェディングドレスやカクテルドレスが並んでいる。

「奥様のサイズとご希望に合わせて、いくつかピックアップしてあります。どうぞ」

 試着室近くの壁際に、数着のドレスが掛けてあった。

「うわ……、どれも素敵」

 そう派手でなくシンプルなものを、というのが私の希望だった。新婚とはいえ貴斗もいるんだし、いかにもなドレスは気恥ずかしい気がしたのだ。

 気に入ったものをひと通り試着したら、二時間近く経っていた。今すぐ決めなくてもいいと言われたので、試着のたびに撮ってもらった写真を見て、家に帰ってゆっくり決めることにした。

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