官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ごめんね、長い時間。疲れたでしょう」

「いや、俺も楽しかったよ。どれも似合ってた」

 今から式が楽しみだと貴裕さんが笑う。喉が渇いたのでお茶をして帰ろうと、貴裕さんと一階にあるティールームへ向かった。

「貴裕さんはどれがよかった?」

「そうだな、俺が印象に残ってるのはこれかな」

 ティールームのテーブルで向かい合い、撮ったばかりの写真を見ながらふたりで話す。

「私はこれも結構好きだったんだけど……」

 画面に出したのは、植物がモチーフのドレスで、蔦が絡まったような模様の肩ひもがついている。それが胸元まで繋がっていて、植物が好きな私には心惹かれるデザインだった。

「ああ、これはダメだ」

「えっ、どうして?」

 どれも似合ってるって言ってくれたのに。

「肌の露出が多すぎる。すごく似合ってたけど、他のやつに見せたくない」

 冗談かなと思ったけれど、違ったみたい。真面目な顔で首を振る貴裕さんを見て、つい吹き出してしまう。

「さすがに結婚式で新婦を邪な目で見る人なんていないわよ」

「いやわからないよ」

 こちらへ、と貴裕さんが手招きをする。言われるままにテーブル越しに顔を寄せた。「現に俺がそうだ。今にも君に手を出しそうで我慢するのが大変だった」

「たっ、貴裕さん!」

 こんなところでなんてこと言うの。言い返そうとした私を、片手で制する。

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