官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「君が、いったい何を根拠に美海が俺には相応しくないと言ったのか知らないが」

 私も見たことないほど冷たい目で、安藤さんを睨みつけている。

「俺が美海を選んだのは、彼女のことを心から愛しているからだ。……美海は他人に寄生して楽に生きることしか考えていないあなたとは違う。自立して、立派に子供を育ててきた」

「何を……」

「最初から俺があなたを選ぶ可能性なんてかけらもない。思い上がるのもいい加減にしてくれ」

 安藤さんはショックを受けた様子で声も出せずにいた。きっとここまで辛辣な言葉を他人からかけられたことなどないだろう。

「このことは、あなたのご両親にも報告させてもらう。いいか、二度と俺達の前に姿を現すな。行こう、美海」

 きっぱりと言い放つと、貴裕さんは私の手を引いて店を出た。ティールームが見えなくなる場所まで歩いて、ふいに立ち止まる。振り返った貴裕さんの顔は青ざめていた。


「すまない、今さら君をこんな目に遭わせて」

「いいのもう。私なら平気」

 貴裕さんの方が、ひどく傷ついたような顔をしている。安藤さんが私を傷つけたことに、彼は傷ついているのだ。私だって胸が痛い。

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