官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました

「うわ、ママきれい!」

 純白のウエディングドレスに身を包んだ私を見て、貴斗が飛びついてきた。

 あれから半年が経ち、私と貴裕さんはようやく結婚式の日を迎えた。今日ばかりは貴斗もおめかしをして、ご機嫌で私に纏わりついている。

「いいだろう、このドレス。パパが選んだんだ」

「うん、ママかわいい。おひめさまみたい」

 生地に透かし模様の入ったマーメイドラインの上品なウェディングドレスは、二日間悩んだ末、貴裕さんが決めてくれた。私もとても気に入っている。

「いいなー、パパ。ママとけっこんできて。ぼくもママとけっこんしたい!」

 貴斗の爆弾発言に、貴裕さんが一瞬ぎょっとする。しかし、すぐに余裕の笑みを浮かべたかと思うと、ほんの少し意地悪な顔をして貴斗を抱き上げた。

「ごめんな貴斗。パパ貴斗のこと大好きだけど、そのお願いだけは聞いてやれない」

「えーっ、なんで?」

 ぷうっとほっぺたを膨らませる貴斗を見て、貴裕さんが笑う。

「ママはパパのお嫁さんなんだ。もう神様に誓ったから取り消せない。だから貴斗は他で見つけてくれ」

「えーっ、パパのいじわる!」

 むくれてバタバタと暴れる貴斗を、貴裕さんが笑いながらあやしている。

「ふたりともいつまでもふざけてないで。さあ写真撮るわよ」

「ぼくママのとなりがいい」

「……仕方がないな。これだけは貴斗に譲ってやるよ」

 貴斗を間に挟んで、三人でカメラの前に立つ。こうやって家族の思い出を切り取って、たまには振り返って家族みんなで「こんなこともあったね」と笑い合っていたい。

 過去の私が想像もできなかった未来がここにある。

 ひょっとしたら、登場人物が増えることだってあるかもしれない。

 私達の未来は未知数。 

 その度に思い出が増えて、私達のアルバムはきっと、何冊にもなるんだろう。


                              完

< 222 / 226 >

この作品をシェア

pagetop