官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 貴斗が幼稚園で作って持ち帰った笹飾りのこと、天の川を見るまで寝ないといってごねて大変だったこと、夕食は星形に切った人参を浮かべたカレーにしたこと。

 ソファーに二人並んで腰掛け、美海の話を聞く。俺も少しだけ、仕事のことなんかを話す。

 とりとめのないことを、二人で話して笑い合う。そんな時間が俺には何よりも愛しい。

 時計の針は、すでに午前一時を指している。貴斗の幼稚園もあるし、美海の朝は早い。早く彼女を解放して寝かせてあげないといけない。わかっているのに、美海をなかなか手放せない。

 今から四年ほど前、美海の不在に苦しんでいたあの夜には、こんな幸せが訪れるなんて思ってもみなかった。

「美海」

 今夜はこれで、終わりにしよう。美海の顎に手をかけ、少しだけ顔を上向かせる。

「……愛してる」

 そっと顔を寄せ、柔らかな唇に口づける。最初は、触れるだけ。少しずつ角度を変えて唇を食み、甘やかな果実をゆっくりと味わう。

 湧き上がる衝動に無理やり蓋をして、それ以上深いキスはせずに、俺はゆっくりと唇を離した。

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