官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ということは、売れ残った花って……」

「値段を下げて売ったり、加工して商品にすることもありますが、ほとんどは廃棄処分されるんです。……って、すみませんお客様にこんな話」

 私のほうこそ、連日の勤務で疲れが溜まっているのだろうか。お客様に愚痴を聞かせるなんて、我ながらなっていない。

「いや、売れ残った花の行く末まで考えたことはなかった。知ることができてよかったですよ」

 不快な思いをさせてしまったかもと一瞬不安になったけれど、ポジティブな返事にホッとした。

「今日はどういったものをお求めですか?」

 店内の花が良く見えるよう、もう一度照明をつける。鮮やかな色の洪水に、彼の視線が一気に惹きつけられたのがわかった。

「……きれいだ。喜ぶね、きっと」

 彼の顔が、ふわりと綻んだ。アレンジを送る相手のことを思い浮かべているのだろう。

「誕生日の花束を贈りたいんです」

 とても優しい、いい表情をしていて、ほんの少し彼のことを羨ましく思う。私には、花を贈るような恋人も、家族すらもいないから……。

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