官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 だいたいの予算を聞いて、店内の花をちらりと見回す。それだけ余裕があるなら、お誕生日ってことだし、バラやダリアを使ってもいいかも。

「どのお花を使ってとか、ご希望はありますか?」

「いや、あんまり花には詳しくなくて……」

「だったら、お花を贈る方の好きな色とか、その方のイメージとか聞かせていただけたら」

「なるほど、イメージね……」

 彼はうーんと唸なりながら片手を顎にあて、考え込んだ。

「なんというか、きりっとした人かな。仕事もばりばりやってて厳しいんだけど、面倒見がいいから下の人間にも慕われてる」

「……素敵な方なんですね」

 彼の話から、凛とした、大人の女性が思い浮かんだ。きっとたくさんの人の真ん中にいる大輪の薔薇のような人。

「好きな色は……なんだったかな。可愛いものや綺麗なものは普通に好きなようだけど」

 そう言って、彼はまた考え込んでしまう。見かねた私は、そっと助け船を出した。

「可愛いものでも色々あるじゃないですか。例えば、パステルカラーの淡い色のお洋服が多いとか、原色のパキッとした色味の小物やネイルがお好きとか」

 私が例えると、彼は「ああ」と顔を明るくした。

「普段の服はモノトーンが多いけど、スカーフとか淡い色のものを身につけているのは見たことがあるな。でも甘ったるい感じの色じゃなくて薄い紫とか」

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