官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「それならば、こういった感じはどうですか?」

 私は花桶の中からいくつかの花を選んで取り出した。モーブ系のバラを中心に数種の花でグラデーションを作って見せる。

「これだけだとまだクールなイメージですけど、小ぶりのベリーやグリーンも入れて少し甘めにお作りするのはどうでしょう?」

 赤やピンクといった華美な色を使うより、シックにまとめるほうが彼女の好みのような気がしたのだ。彼の表情をうかがうと、満足そうに頷いている。

「いいね。それでお願いします」

「かしこまりました。それでは、こちらでおかけになってお待ちください」

「ありがとう」

 彼を店の隅にあるテーブルに案内し、椅子にかけるよう促した。

 ふと思い立って、花束ができるまでお茶でも飲んで待っててもらおうと思ったのだ。

 店の奥に向かいながら彼の様子をうかがうと、椅子に腰かけて深いため息をついている。やはり忙しい人なのだろう。そして、仕事終わりに、たまたま見かけたこの店に駆け込んだ。

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