官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「美海さん」

「……はい」

「あなたは謙遜したけれど、俺は君と出会って、窮屈だった世界から抜け出して、ちゃんと息ができてるように感じているんだ。そのお礼と言ってはなんだけど、今度食事に行きませんか」

「食事、ですか……。私が時田さんと?」

「ええ、ご迷惑でなければ」

「そんな、迷惑だなんて」

 時田さんから誘ってもらえるなんて、夢でも見てるんじゃないだろうか。でも彼はとても真剣で、私のことを揶揄っているようには思えない。

「嬉しいです」

 勇気を出して、そう答える。時田さんの顔に安堵の笑みが広がった。

「よかった。今週の土曜日の夜、店が閉まる頃に迎えに来ます」

「……はい」

「約束だよ」

 嬉しそうな顔でポンと私の頭を撫でると、時田さんは車に乗り込み去っていった。ふわふわした気持ちで、彼の車が見えなくなるまで、店先に立って見送った。

「嘘じゃないよね……?」

 外の空気は吐く息が白いほどなのに、両手で触れた頬が熱い。半分上の空で外を片付け、店内から鍵をかける。作業台の壁のカレンダーを見ると、約束の土曜日の部分がやけに大きく見えた気がした。

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