官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
約束の日は、すぐに訪れた。
気持ち早めに店を閉め、奥の更衣室でお店のロゴ入りのエプロンを外し、動きやすさ重視のジーンズとトレーナーを脱ぐ。手持ちの中で唯一よそ行きと呼べるワンピースに着替えた。
花屋の仕事は力仕事も多く、冬場でも汗を掻く。ロッカーに付属している小さな鏡を見ながら、すっかり落ちてしまったメイクを直す。せめてリップだけでもと、普段使っているものより気持ち明るめの色を選んだ。
こうしている間も、胸が高鳴るのを感じる。男性とふたりきりで出かけるなんて、どれくらいぶりだろう。久しぶりすぎて、最早服やメイクもどれが正解なのかわからない。
不安なままコートを着込んで、店の裏口から外へ出た。夜の空気は一段と鋭さを増していて、頬を刺すほど冷たい。コートの襟を合わせて足早に店の表側へと回ると、時田さんはすでに私を待っていた。
「時田さん!」
「美海さん、こんばんは」
「ごめんなさい、お待たせして」
「全然、俺も今来たところだから。さあ、こちらへ」
手招きされて車に近づくと、時田さんは私にハッと目を留めた。私の全身に視線を走らせ、彼の動きが止まる。
やっぱり、どこかおかしなところがあったのだろうか。