官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「……時田さん?」

 呼びかけると、彼はなぜか困ったような顔をして視線を逸らした。

「ひょっとして、この格好変ですか?」

 元々ファッションセンスに自信があるわけでもない。

「違うよ。美海さんがいつもと違うから」

 しゅんとする私に、時田さんが慌てて首を振った。

「素敵だよ、とても。それに、俺のためにおしゃれしてきてくれたんだよね。それが嬉しくて」

 その通り、なのだけれど。恥ずかしくて頷くしかできない私を見て、時田さんは「参ったな……」と照れて笑った。

「行こうか」

「は、はいっ」

 私の手を取り、助手席のドアを開けてくれる。こんな扱いは受けたことがなくて、どぎまぎしてしまう。

「ありがとうございます」

「どういたしまして。それとお願い。今日は敬語はやめて。これからの時間、俺はお客さんじゃないし、美海さんはラパンの店員さんじゃない」

「わかりました……」

「ん?」

「あっ! ……わかった。ありがとう」

「よくできました」

 嬉しそうに目を細めて、貴裕さんが私の頭を撫でる。シートに腰を下ろしても、ドキドキはなかなか治まりそうになかった。

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