官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「今日は家族でよく行く店を予約してるんだ。美海さんは和食は好き?」

「大好きです」

 フランス料理とか、いかにも高級なお店に連れて行かれたらどうしようと、ちょっとだけ思っていた。和食ならあまりテーブルマナーも気にせずに済む。

「よかった。個室を頼んでるから、美味しいものをゆっくり食べよう」

「楽しみ!」

 きっと私のことを気遣って、お店を選んでくれたのだ。優しい人だな……としみじみ思う。


 時田さんが連れて来てくれたのは、都内でも老舗の部類に入るホテルにある、和食の有名店だった。

 週末の夜とあって、店内はほぼ満席。でも時田さんが個室を予約してくれたおかげで、落ち着いた空間でゆっくりとお料理を味わうことができた。

 時田さんと過ごす時間は、とても楽しかった。ほんの少しお酒も入り、彼がたくさん笑わせてくれて、気がついたら緊張は解けていた。

 学生の頃に旅したと言う外国の話、出逢った人々や魅了された食べ物、旅好きが乗じて今は旅行会社で働いていること。

 私自身の話は……あまりできなかった。私の過去はつらいことが多いから。この楽しい時間に水を差したくなかったのだ。それでも時田さんは、私のことを無理やり聞き出すようなことはしなかった。

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