官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「安藤さんが?」
「ええ、ずっとお待ちです」
ホテルから一度自宅へ戻り、着替えて出社すると、秘書の管野卓也が俺を待ち受けていた。休日はちゃんと休めと言ったのに、菅野は俺が休日出勤をする時は律儀に顔を出す。
「菅野どうして出勤した? 今日は休みだろ」
「何言ってるんですか。私が出て来たおかげで安藤さんを足止めできてるんでしょ。感謝してください」
菅野の父親も、長年に渡って俺の父を支え、うちの会社の秘書室を統括していた。そのおかげもあって菅野と俺のつきあいは古く、幼なじみのようなものだ。
菅野が俺に遠慮なんてものをするはずもなく、苛立ちを隠そうともしない。まあそれも無理もない、と思う。
安藤芹香とは、知人主催のパーティーで知り合った。
うちの会社でも関わりのある大手ホテルチェーンの娘ということもあって、それなりに丁重に接した。それがどうやら失敗だったらしい。
順調にいけば、近いうちに父の跡を継いで俺が会社の代表となる。このことは、すでに業界内に広まっている。それを見越して、俺に秋波を送る女性は少なくない。
安藤芹香もそのうちのひとりだった。