官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 彼女はパーティーで知り合ったのを機に、しつこくコンタクトを取って来るようになった。

 菅野にも協力してもらい、それなりにうまくかわしていたつもりだった。しかしまともに取り合わなかったのが逆効果となったのか、業を煮やした彼女は知人を使ってお見合いを申し込んで来た。

 その知人が俺の父親の恩人だったため、どうしても断ることができず、渋々お見合いを受けたのが先週のこと。

 しかしすでに美海という存在があった俺は、『心に決めた人がいるから』と言ってきっぱりと断った。

 それで全て終わった、そう思っていた。

「日曜なのに、どうして会社に?」

「常務が出勤なさることをどこからか嗅ぎつけてきたようです。おそらく日野(ひの)様あたりでしょう」

 その日野さんが、俺の父親の恩人だ。安藤芹香に頼まれて、日野さんがうちの父に探りを入れたんだろう。本当にうんざりする。

「それで、彼女はなんて?」

「せっかくの休日なので、ランチでもどうかと」

「休日って、向こうはそうでも俺は違うんだが」

 事実、今日も一日かけて仕事を片付ける予定でいる。そのために、後ろ髪を引かれる思いを振り切って、美海を置いて先にホテルを出たのだ。

「そう申し上げましたが、自分ならいくらでも待つから、と」

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