官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「わかりませんよ、人の心の中なんて」

 なんて、菅野はわかったような口を利く。

「ともかく、相手が世間知らずのお嬢様だからって油断してないで、さっさと追っ払ってきてください」

「いや、会う必要はない。直ちにお引き取りいただくよう伝えてくれ」

 ここで会っても、きっと余計につけ上がらせるだけだ。冷たい対応をされれば、いくらあのお嬢様でも察するだろう。

「……わかりましたよ」

 うんざりとした顔で部屋を出ていく菅野を見送り、ひとつため息を吐く。ここに来るまでは、あんなに多幸感に酔いしれていたというのに、お嬢様のせいで全て台無しだ。

「さて、仕事するか」

 机の隅には、新規事業の企画書が山と積まれている。書類を読むことに没頭して、安藤芹香のことなど、いつの間にか忘れていた。 

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