官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
翌日の金曜日は、朝から快晴だった。湿気も少なくて気持ちがいい。
週末にかけてのひぐらし荘は、ほぼ満室。開園時間と同時に貴斗を保育園に預け、私は出勤した。
私や他のパートさん達は朝から宿泊のお客様のチェックアウト業務、客室の清掃や備品のセッティングにリネン類の洗濯、宿周辺の掃除とずっと動きっぱなしだ。
「美海、この野菜どこに置いたらいい?」
お昼過ぎ、休憩室で智雄さんが作ってくれた賄いを食べていると、雄ちゃんが帰って来た。
役場はちょうどお昼休みの時間だから、昼食を食べに帰って来たところを、業者さんに捕まったのだろう。
雄ちゃんはひぐらし荘は継がず、島の役場に勤めている。もっとこの島に観光客が来てくれるようにと、その仕事を選んだらしい。自分の仕事もあるのに、週末や時間がある時は宿の仕事を手伝ってくれる。
「智雄さんが戻ってきたら下ごしらえを始めると思うから、厨房の調理台の上に置いておいてくれる?」
「了解」
智雄さんは先に食事を済ませ、外で煙草を吸っている。私が賄いを食べ終える頃には戻ってくるはずだ。
雄ちゃんは私が食べている賄いを覗くと、目を輝かせた。
「おっ、今日は荒炊きかぁ。美味そうだな」
「雄ちゃんの分もあるよ。食べていくんでしょ?」
「いや、お客さんの迎えに行ってからにするわ」
そういえば、早朝から船釣りに出ているお客さん達が、そろそろ帰って来る頃だ。私か素子さんが港まで迎えに行くことが多いけれど、たまに雄ちゃんが代わってくれる。