官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「へぇー、中はこうなってるのね。なかなか素敵じゃない」

「……ありがとうございます」

 褒めてくれている、のだろうけれど、なぜかそう素直に受け取れない。

 女性は好奇心に満ちた表情で一通り店内を見終えると、最後に私に視線を合わせ、フッと口元を緩めた。

 その顔を見て、ようやく気がついた。この人の笑顔は、本物じゃない。私を見た時からずっと浮かべているのは嘲笑だ。

 初対面なのになぜ? 全く心当たりはない。次はいったい何を言ってくるのだろうと、息を詰めてその顔を見つめる。

 私が警戒心を抱いたことに、気がついたのかもしれない。仕方ないわねとでも言いたげにわざとらしくため息をつくと、その人は再び口を開いた。

「私は安藤芹香と申します。……あなた、時田貴裕さんのこと知っているわよね?」

「はい。でも、どうして……」

 彼女の口から、思いもよらぬ人の名前が出て驚く。そんな私を見て、綺麗にリップが塗られた彼女の唇が、好戦的な笑みを浮かべた。

「単刀直入に話すわ。これ以上彼にちょっかいを出すのをやめてもらいたいの」

「ちょっかいって、それはどういう意味ですか?」

 まるで貴裕さんが、自分のものであるかのような口ぶりだ。

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