官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
美海side
配達から戻ると、パートの瑞季さんからメモを渡された。
「あ、店長おかえりなさい。出られている間に、店長宛てにお電話ありましたよ」
「私に?」
「ええ、若い男性の方でした」
電話をかけてきたのは、貴裕さんだった。
瑞季さんがくれたメモには、彼の名前と携帯の番号が書いてあった。せっかく涙で消えてわからなくなったと思っていたのに、彼の番号がまた私の元へと帰ってきた。メモを見て、複雑な気持ちになる。
「お電話くださいっておっしゃってました」
「後でかけてみます。ありがとう」
メモを半分に折り、エプロンのポケットに入れる。電話をかけ直すつもりはなかった。
結局、私から連絡はしていない。今も彼は、店の電話番号しか知らない状態だ。
貴裕さんと結ばれた翌日、この店を訪れた人のことが尾を引いていた。自分は貴裕さんの婚約者だと、あの人は言った。あの人と結婚しなければ、貴裕さんは会社を継ぐことはできないと。
私の存在は、どうしたって彼の邪魔になるのだ。こんなにつらいことってない。