官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「店長、とりあえず本当に妊娠してるのか確認しましょう。配達は私が行きます。その帰りに検査薬を買ってきますね」

「でも、瑞季さんにそこまでさせるわけには……」

「私以外に今すぐ頼れる人いるんですか?」

 そう言われ、グッと言葉に詰まってしまう。私には、家族がいない。両親は私が高校生の頃に亡くなっている。そのことを瑞季さんは知っている。

 それに、こういうことを頼めそうな友人もすぐには思いつかなかった。

「……お願いします」

「任せてください」

 瑞季さんは安心させるように私の肩をポンと叩くと、手早く配達の用意を済ませ出かけて行った。


 瑞季さんは、そう時間を空けず帰って来た。

「はい、これが検査薬。使い方はここに書いてあるから、すぐ試してみてください」

 ドラッグストアの紙袋に入っていたのは、ピンクのパッケージに入った妊娠検査薬だった。

「こういうのは、さっさと結論を知るのがいいんです。後に伸ばしたって、苦しい時間が続くだけなんだから」

「……そうですよね」

 瑞季さんに背中を押されて覚悟が決まり、検査薬を持ってお手洗いに入る。結果は陽性だった。そう伝えると、瑞季さんの顔が僅かに引き締まる。

「店長、相手には?」

「……言えません」

 子供の父親は、間違いなく貴裕さんだ。私には彼以外に相手はいないし、時期的にもピッタリ合う。でも、このことを彼に伝えるわけにはいかない。

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