官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「……わかった。美海ちゃん、一緒に島に帰ろう。みんなで生まれてくる子供を育てよう」

「でも、私には帰る家なんて……」

 両親と住んでいた小さな家は、島を出るときに処分してしまっている。つらい思い出のある島には、二度と帰るつもりはなかったのだ。私は島を捨てた人間なのに……。

「うちに住めばいい。そして子供を産んで落ち着いたら、うちの宿を手伝って。こんな時くらい甘えてよ。……私は湊にあなたのことを頼まれたのよ」

「素子さん……」

 もういない母との約束を、素子さんはずっと守ってくれている。心も、体も、すっかり弱り切った私には、素子さんに頼る以外思いつかなかった。

「よろしくお願いします、素子さん……」

 こうして私は、お腹の子供と一緒に生まれ育った島へ戻ることになった。

 八か月後、私は本土の病院で元気な男の子を産んだ。貴裕さんから一字もらって、貴斗と名付けた。

 会わせることはできないけれど、あなたには優しくて素敵なお父さんがいる。だから強く生きて。そう願いを込めた。
 
 病院を退院する前日、気になって彼の会社の事を調べてみた。ネットで検索して一番に出て来たのは、彼が急逝した父親の跡を継いだというニュースだった。

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