官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました

「美海ちゃん、お客さんのお迎えを頼める?」

「あれ、まだチェックインが済んでないお客さんいた?」

 素子さんに声をかけられたのは、十七時過ぎ。もうそろそろ夕食の配膳が始まるという頃だった。

「急だけど予約が入ったの。藤の間だけ空いてたでしょ? ちょうどいいと思って」

 ということは、これで今日のひぐらし荘は満室だ。客室の用意は万全だし、今から一組増えたところで問題はない。それに、盛況なのは私も嬉しい。

「わかりました。でもこっちは大丈夫?」

「うん、他のパートさんもいるし、もうすぐ雄介が帰って来るから」

 今日は遅番のパートさんがふたり入っている。雄ちゃんは今、貴斗と柚子ちゃんのお迎えに行っているからちょうど私と入れ違いくらいで帰ってくるだろう。パートさんに加えて、雄ちゃんも手伝ってくれるなら安心だ。

「素子さん、お客様のお名前は?」

 これまで普通に話していたのに返事がない。素子さんは私の耳の後ろ辺りを見てぼーっとしている。かと思うと、突然フロントに常備してあるウェットティッシュを一枚取り出して、電話やカウンターを拭き出した。

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