官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ところで貴斗は?」

「もう寝たよ。疲れてたみたいで」

「まだ八時なのに?」

「いつもこれくらいよ。一度寝たら朝まで起きないし」

 生まれてからしばらくは、一時間置きくらいに起きては泣く子だったけれど、一歳を過ぎた頃から、貴斗は一度寝ると朝まで起きなくなった。今ではだいぶ手がかからない方だと思う。

「子供って、そんなものじゃない? 疲れたりお腹がいっぱいになったりすると、電池が切れたようにパタンと寝ちゃうし」

 貴裕さんは、「へえ」と目を丸くしている。

「貴裕さんのところは、そうじゃないの?」

「え、俺のところはって?」

「だって、貴裕さん結婚したんでしょう? もう三年も経っているし、てっきり……」

 安藤さんと結婚することが、貴裕さんが会社を継ぐための条件だったはずだ。貴裕さんがエテルネル・リゾートの社長に就任しているということは、そういうことなんだと思っていた。

「やっぱり、まずはそのことからだな」

「……何が?」

「言っただろ、君は誤解してるって」

「誤解って、いったい何のこと?」

「知っているだろ、安藤芹香。元はと言えば、あの女が元凶だ」

 それから、貴裕さんは全てを話し始めた。


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