官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「信じてくれ、俺は結婚なんてしていない。全てあいつの嘘だ。俺は……ずっと君を探してた」

 貴裕さんの切羽詰まった瞳。さっき声を荒げたことといい、初めて見る姿ばかりだ。でも、普段落ち着いて優しい雰囲気を纏っていた彼が自分を失ってしまうほど、必死なのだとわかる。

「……わかった。信じます」

「ありがとう、美海」

 心から安堵した顔で、彼が言う。そんな姿を見ていると、また手を伸ばしたくなる。どこかに追いやっていたはずの気持ちが姿を現しそうになる。私はグッと堪えて、再び口を開いた。

「でも、どうして今?」

 貴裕さんほどの立場の人ならば、私を探すくらい訳もないことのように思える。実際、島に帰ったばかりの頃は、いつか見つかってしまうのではないかと怯えていた。

「俺も不思議だった。美海が外国に出たのでもない限り、すぐに見つけられると思ってた」

 でもそこにも、安藤さんが手を回していた。全て先回りをして、貴裕さんに私の行方が知れないよう妨害をしていたという。

 貴裕さんもまさか安藤さんがそこまで自分に執着しているとは思いも寄らず、彼女の事は完全にノーマークだったらしい。

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