官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「安藤から君の居場所を聞き出して、貴斗の存在も知って、……後悔したよ。俺はあの時仕事に逃げずに、なんとしてでも君を探し出すべきだった」

「貴裕さん……」

 畳に手をついて項垂れる貴裕さんの肩に、そっと触れる。ぴく、と微かに体を震わせて、彼が顔を上げた。

「謝らないといけないのは私の方。……あなたに黙って勝手に貴斗を産んでしまってごめんなさい」

「俺の子って認めるんだな」

 これ以上、黙っていることも下手にごまかすこともやってはいけないと思った。

「はい」

「……っ、美海!」

 肩に触れていた手を掴まれ、その胸に抱き寄せられた。体を離そうともがくと、さらに強い力で抱きしめられる。

「貴裕さん、離して」

「離さないよ。もう二度と離れないって決めたんだ。美海、東京に戻って、貴斗と三人で暮らそう」

「……ごめんなさい。できないわ」

 ゆっくりと、顔を上げる。虚を突かれたかのような彼の顔。この期に及んで、私が拒むとは思っていなかったのだろう。

 貴裕さんの胸に手をついて体を起こすと、今度は無理に抱きしめるようなことはしなかった。

「美海、どうして……」

「安藤さんが言ってたことが全て嘘だったとしても、あなたがエテルネル・リゾートの社長であることに変わりはないわ。……ごめんなさい。私とあなたは、とてもじゃないけどつり合わないと思う」

 安藤さんに言われたからじゃない。この三年間、貴裕さん自身のことや彼のご実家、会社のことなど、私なりに色々調べてきた。そして彼のことを知るたびに、自分との差を思い知らされた。

 私は、どうしても自分が彼の隣にいるに相応しい人物だとは思えない。

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