官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
DAY2 愛しい、それしか思い浮かばない
貴裕さんが島に来て二日目。土曜の今日は絶好の釣り日和だ。ひぐらし荘に泊まっているお客さんの半分が、早朝から船釣りに出かけている。
今日の私は早番で、朝食の時間から夕食準備までを手伝うことになる。
貴裕さんは、もう起きているだろうか。そっと食堂の中を覗くと、貴裕さんはとっくに席についていた。
「おはよう、美海」
昨夜は、驚いたのと焦ったので、彼の部屋から逃げるように飛び出してしまった。気まずく感じていたのは私だけで、彼はなんとも思っていないらしい。爽やかな笑顔で私に微笑みかけてくる。
「……おはようございます」
それにしても……。他のお客さんの前で、気安く名前を呼ぶのはやめて欲しい。そっと貴裕さんを睨んでみても、澄ました顔をしている。それがまた腹立たしい。
「なんだぁ、美海ちゃん。彼氏が来てるのかい?」
そう声をかけて来たのは、常連のお客さんだ。磯釣りが好きで、月に一度は本土からひぐらし荘に泊まりに来る。
「何言ってるんですか、違います。……時田さんは、古い友人なの」
「そうなんかぁ、もったいない。見惚れるほどの色男じゃないか」
貴裕さんはというと、こんなことは言われ慣れてるのだろう。「ありがとうございます」なんて言って、余裕の笑みを浮かべている。