官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「無理してついていかなくても、ずっとここにいればいい。貴斗のことも、今まで通りみんなで育てればいいだろ」

「智雄さん……」

 智雄さんも素子さんも、貴斗のことを実の孫のように可愛がってくれている。父親がいなくても、貴斗が寂しい思いをしないで済んだのはみんなのおかげだ。

「この話はもう終わりだ。雄介は先に飯食ったら朝飯の皿洗いな」

「ちぇっ、わかったよ。でも皿洗い終わったら俺は出かけるからな。午前の便で薫が帰って来るんだ」

 雄ちゃん、薫さんのことを迎えに行くんだ。相変わらずラブラブだな……。

「後のことは私がやるから安心してね」

「悪いな」

「全然」

 役場の仕事もこなした上で、お手伝いをしてくれてるのだ。雄ちゃんには感謝しかない。

「そうだ、俺が貴斗の面倒見てやろうか? 柚子もいるし」

「いいいい。せっかくのお休みなんだから、雄ちゃんはゆっくりして」

 保育園のない日は、貴斗はひぐらし荘に連れて来ている。忙しくてあんまりかまってあげられないのはかわいそうだけれど、週末はいつもそうしている。

「食堂の様子を見てくるね」

 トレイを持って、厨房を出た。

 食堂に戻ると、大半のお客さんは食事を終え、もう部屋に戻っていた。窓際のふたり掛けの席に、ポツンと貴裕さんが座っている。外の景色を眺めながら、食後のお茶を飲んでいた。

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