官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「美海は今日も仕事なんだろ。貴斗の面倒は誰が見るの?」

「休みの日はいつもここで見てるの。つきっきりってわけにはいかないけど、その時手が空いてる人が相手をしたり」

「そうなんだ。俺が見てようか?」

 貴裕さんがひとりで貴斗を?

「そんな無茶よ。まだまだ手がかかるよ」

 早いうちから保育園に行っていたおかげで、オムツはばっちり外れているけれど、言葉もまだ拙いし、言いたいことがうまく伝わらなくて癇癪を起こすこともある。人見知りの貴斗がいくら一発で懐いたからって、いきなり一日一緒に過ごすのは無理に決まっている。

「どうして? やってみなきゃわからないじゃないか」

「だって貴裕さん、子供に関わったことないんでしょう?」

 ついさっき、自分の口でそう言ったばかりなのに。

「あのな、美海」

 貴裕さんは席から立ち上がると、人差し指で私の眉間をトンと突いた。

「経験がないから無理だって決めつけてたら、何もできないよ。絶対に貴斗の安全を最優先にするし、困った時は美海やオーナーさん達の手を借りる。だから、俺から貴斗と仲良くなるチャンスを奪わないでくれ」

「私、そんなつもりじゃ……」

「わかってる、美海は俺に気を遣ってくれたんだろう。でも俺だって少しでも早く、ちゃんと貴斗の父親になりたいんだ」

 この先私が、彼とは違う道を選んだとしても、貴裕さんと貴斗は正真正銘の親子だ。親として成長したいと言う貴裕さんを止める権利は、私にはない。

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