官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「いい人じゃない、時田さん」

「……うん」

「ねえ美海ちゃん見て。貴斗すっごく楽しそう」

 逃げる貴斗を貴裕さんが絶妙な距離感で追いかけている。たまに貴裕さんが貴斗の体にタッチすると、それをまた貴斗が喜ぶ。子供と接する機会がないと言っていたわりに、貴裕さんは子供の喜ぶツボをよく知っている。

「素子さん、彼が来ること知ってたんでしょ?」

 私が言うと、素子さんは笑いながら肩を竦めた。

「雄介に聞いたの?」

「うん。なんか感づいちゃったみたい」

「チャラチャラしてそうに見えて、雄介も案外よく見てるのねぇ」

 まんざらでもなさそうな顔で、素子さんはそう言った。

「時田さんね、実はここに泊まりに来るよりも少し前に私に連絡をくれてたの」

「えっ、そうだったの?」

 素子さんは、黙ったまま頷いた。

「あなた達を探し出すまでに時間がかかったことを、心から悔いてたわ。美海ちゃんに本当にすまないことをしたって。私達にも謝ってくれて」

 黙っていなくなったのは、私の方なのに。貴裕さんはきっと、自分を責め続けていたに違いない。

「でも、あなたの傍に私達がいてくれて良かったって。美海ちゃんはきっと誰にも頼らずに、ひとりで何とかしようとするから、心許せる人が側にいたって知って安心したって言ってくれたの。たぶん私達だったから、美海ちゃんも素直に甘えられたんだろうって。そんなふうに言ってもらえて、私もとっても嬉しかった」

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