官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「貴裕さんが、そんなことを?」

 私達が一緒にいられたのは、本当にごく僅かな時間だった。それでも貴裕さんは私のことを深く理解してくれていたのだと改めて思う。

「ねえ美海ちゃん、時田さんと一緒に行かないの?」

「……まだわからないの。貴斗のためには、そうするべきなのかもしれないけど……」

「何か引っかかってる?」

「……うん。貴裕さんのおうちのこと聞いてる?」

「確か事業をしてらっしゃるのよね?」

 私がエテルネル・リゾートのことを話すと、素子さんは目を丸くしていた。規模は違えども同じ業界ということで、これまでエテルネル・リゾートの記事やテレビの特集なんかを目にしていたらしい。

「そこの社長さんなの……」

「うん、私とは全然違う世界の人」

「気になるのはそこ?」

 素直に頷いた私の肩を、素子さんはただ黙って抱いてくれた。

「ゆっくり考えたらいいわ。一生のことだもの、焦ることないわ」

「……そうだね」

 この一週間、自分なりに考えてみよう。どうすることが正解なのか。……私はどうしたいのか。

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