13番目の恋人
服装は、シンプルな黒のロングワンピースにベージュケーブルニットのカーディガン。

もうちょっと、大人っぽい方が良かったのかな。いや、むしろ地味な色合いで、もう少し女の子らしい色味の方が……。
 ああ、ほら、万里子さんにパーソナルカラー診断とか骨格診断の詳細聞いて、事前に行っておけば良かったのに。すぐに行動しないから、こんなことに……。
 
 インターホンが鳴って、この音はマンションの入り口の方だ。ロックを解除してしばらくすると、ドアの前のインターホンが鳴った。
 
「こ、こんにちは、早かったですね」
「……早く会いたいって言うからさ」
 彼はチラリと腕時計に目を落とすとそう言って
「あ、いや、俺も会いたかったけどね」と、照れ臭そうに笑った。

「いや、違います、もっと早くてもいいくらいで、電話から到着まで早かったなあって」
「意外に近いんだよ、俺の家から」
「そうですか、嬉しい」
「……入ってもいいのかな?」
そう言われて、玄関でドアを開け放して喋っていたことに気がついた。

「ど、どうぞ」
緊張で、手も足も一緒に出てしまうくらいだ。

「……そうか、椅子がないんだったね」
そう言った彼に被り気味で嬉々として言った。
「クッション、ふかふかにしておいたので、こちらへ座って下さい!」
 
用意しておいて良かったと満足した。
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