13番目の恋人
第12話

小百合

野崎さんの持ってきてくれた、一口サイズの焼き菓子の詰め合わせには、シンプルなクッキーから、色の入ったアイスボックス、ナッツ、ジャムの入ったもの。シガレット、ラングドシャ、ガレットブルトンヌ。さくさくのパイ生地、パートフイユタージュ。
 全部気軽につまめる小さめのものがいっぱい入っていて、ついつい食べ過ぎてしまう。
 
「わあ、美味しくて、手が止まらない」
「この少し小さめって食べ過ぎちゃうらしいよ。ドカンと大きい方が早く満足するんだって」
「まんまとやられてます。美味しい~。でも、ここの洋菓子美味しいっていうのもありますよ、どこのですか?」
N.(エヌポワン)Quatre quart(キャトルカール)
「ここの、美味しいんですよね。この詰め合わせは初めて食べました。店名の通り、キャトルカールが美味しいんですよ! 食べたことあります?」
「ああ、シンプルでうまいと思う」
「そうなんですよ、でも一人だと一本っていうのかな? 丸々は大きくて……」
「カットしたのを個包装で売ってたけど……」
「え、本当ですか? じゃあ今度買いに行こうかな、一つだけ買うのってどうなのかな」
「そういう声があったから、個包装が売ってるんじゃない? 」
「そうなのかも!」
「でも、二人で食べるから今度はまるごと買ってくるかな」野崎さんが優しく微笑んでくれる。
「いいですね、そういうの」
 
コーヒーとお菓子。他愛もない会話。いいな、こういうの。
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