13番目の恋人
今度は二人並んで後片付け。あっという間だ。
「たらことトマトって組み合わせ最悪だったね」と思い出して笑った。
「次からは気をつけましょう」

 一日一緒にいたのに、まだ一緒にいたい。
「そんな顔しなくても、また来るよ。俺の家に来てくれてもいいし。どこか出かけてもいいし、な?」
 野崎さんは大人だなあ。そうやって簡単に帰れちゃうんだな。

「じゃあ、あと10分だけ」そう言った私にやっぱり困ったように笑ったけれど、ソファへ移動すると、私にも隣に座るように促した。
 
「……楽しかったね」
「そうですね、“後で”はなかったけれど」
 口をとがらせると
 
「だからー、まだまだ始まったばかりだよ。ステップがあるんだって」
「ステップ1は?」
「……手を繋ぐ」
随分可愛い発想だけれど、確かに繋いだ事はない。言葉のままに、彼の手を取って、指をからませた。
 
「ははっ、恥ずかしいな逆に」
「ステップ2は?」
「何だろう、ハグ?」
「自分でステップとか言いながら、知らないんじゃないですか。それに、もうしましたけれど」
「あー、本当だね。じゃあ、しない?」
「しますけれど……」
横に座っているからハグの形がちょっとおかしいけれど、彼の胸に顔を預けた。
 
「ステップ3は?」
「……キスかな」
 
彼の胸から顔を上げると、自分からそっと唇を重ねた。
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