13番目の恋人
「野崎さん、ちゃんと香坂さんの事好きだと思うよ。でないとあんなモテる人がわざわざ社内で恋人作らないだろ」
「うん、そうだね」
「確かに野崎さんもう30過ぎてんもんな。結婚とか考える年かぁ。でも、俺たちだって、例えば、俺と香坂さんが今から3年付き合えば、結婚考えるんじゃない? なんていうか、うまく言えないけど、いい恋愛って、ある。お互いにとって、プラスになるような、メリットデメリットじゃなくて、そういうの、いいよね」
「うん」
私にとって、野崎さんとの恋愛は
 実る=結婚というものではなくて
 実る=自由に恋をする、だったことを思い出した。
 
 期間限定でも、一緒にいたい。そう思って付き合って貰った。結婚したいほど、好きになれる人と恋人になれて、私は今、とても幸せだ。
 
「なーんか、納得した?」
「うん、気持ちの落ち所を見つけた感じ」
 「年明けくらいになったら、わりと暇になるらしいよ。まあうちの部署は野崎さん抜けるから微妙だけど」
 
そっか、いつまで一緒にいられるか、野崎さんとちゃんと話をしよう。終わりがわかっても、ちゃんとこの気持ちを大切にしよう。後悔がないように。そう思った。
 
「いいな、俺も彼女欲しいな」と、ボソッと言った大宮くんに笑った。
 
「好きな人と恋人になれるって、めちゃ凄いことだよな、その先にいつか結婚があれば、最高なんだけどな」

そうだね、きっとそれは最高で、とても贅沢だ。
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