13番目の恋人
「じゃ、いいよね。ステップ……」
「……? あの……?」
「何?」
「私、朝型なもので、夜更かしはあまり得意ではないので……出来ればその、あまり遅くならない方が……助かります」
「……今日、泊まるんだよね?」
「ええ!? 何の用意もしてなくて、その……会社から直接来たので……」

彼が、しばし停止した。

「あ……そうか、通じてなかったか。遅くなるって伝えたから、そうしてくれるものだと。……あー、一つ訊くけれど、帰りたい? 会ったばかりだけど」
 
……そうだ。何か話すことがあるのだとばかり考えていたけれど、恋人なのだから、理由がただ会いたかったっていうのもあるわけで……正当な理由など、なくて、そんな気持ちだけだということか。
 
「私も会いたかったので、でも、何かお話があると思い込んでいたので……あの……?」
 ただでさえ近い距離、私はソファのはしっこ。それなのに近づいて来る彼に思わずのけ反ってしまい、彼は優しく……いや、楽しそうに笑った。
「コーナーに追い込んだ気持ちだな、楽しい」
「もう!」
 
彼の胸を手で押し返してみたけれど、ビクともしない。それどころか
 
頼人(よりひと)って、呼んでみて? 」

と、耳元で囁く。さっきの、ステップ5!いや、ステップって最終的には、どのくらいまであるのだ……ろ……。
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