13番目の恋人
 いつの間にか、今年もカレンダーが最後のページにを残すだけとなった。
 
 私が心配することではないと頼人さんが言った通り、私は何も考えずに、自分の気持ちを優先して過ごしていた。
 
 自分の選んだ恋人と、こうやって過ごせる事が幸せで後悔なんてない。むしろ、こんな時間がないまま結婚した方が、私はずっと恋も知らなかった事を後悔しただろうから。
 
 ──少しづつ割り切るというか、気持ちの整理をつけないと、そう思い始めた頃だった。
 
 兄から、1本の電話で呼び出され、都内のレストランにいた。

「どうだ、仕事は」
「うん、凄く楽しい。俊くんに感謝」
「そうだな、俊彦からも小百合がよくやってると聞いてるよ。楽しいなら何よりだ」
 
 兄は結婚して、今は会社の近くのマンションに住んでいる。私が一人暮らしをするまでは時々、実家で食事をする時間をつくっていた。皆が揃う機会を定期的につくっていたのは、
「もしかしたら、小百合は遠くに嫁いじゃうかもしれないからな」ということらしい。私が家を出てからは年に二度集まるくらいになっている。その二度目がこの年末年始になるのだろうか。
 
「今日、呼び出したのは他でもなく……」
 兄は勿体ぶって、前置きをした。
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