13番目の恋人
だって、やっぱり俊くんは格好いいんだもん。特に、こうやってお仕事のスーツだとより一層そう見える。

俊くんは兄の同級生で、私が身内以外で初めて異性だと意識した人ではあるが、うちの事情もよく知ってくれているし、育ってきた環境も似ているせいか、私にとても親身になってくれている。

うちの家族の信頼も厚い。だからこそ、ここで働く事になっても誰も反対なんてしなかったのだ。

正直、姉が羨ましかった。姉より俊くんは二つ年下ではあるものの、温厚で大人っぽい俊くんと姉は、子供心にお似合いに見えた。

姉が稔くんを好きだとわかった時は、俊くんとの結婚話は、よくある漫画のストーリーのように、姉の代わりに私が嫁ぐのではと期待したものだった。王道だ、と。

なのに、そんな話は一切出ずに、俊くんは今年に入ってもうすぐ婚約する、と聞いた。お相手は、私達とよく似た境遇のどこぞのお嬢さんだ。

「そっか、俊くんもお見合い結婚だもんね」
「うーん、だな。でも自分で口説いたんだぞ」
意味が分からず、私は少し首を傾げて、俊くんに説明を促した。

俊くんは、ふっとそのお相手を思い出す様に目を細めて、いつもよりもう少し優しい表情になった。

ちゃんと、彼女の事を好きなんだなってわかる、そんな顔だ。
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