13番目の恋人
 彼女にはステップ、ステップ誤魔化したけれど、実際に踏まなきゃいけないステップがあるわけだ。
 
 ──まずは……そう思っていると、タイミング良く俊彦に呼び出された。
 
 結構日にちは経っていたが
「手、出してないだろうな」あの日、ラウンドテーブルが届いた日の事を詰め寄られる。
 
 軽く説明をした。万里子さんに頼まれて彼女の監視のつもりで飲み会に参加したこと、彼女が酒もまともに飲んだ事もなかったこと。驚かなかったということは、俊彦も彼女とは飲まなかったのだろうか。
「まあ、あいつはそうかもな」なんて言っていた。
 
 そこで、彼女が過去の付き合った人数を口にしたことを話すと、俊彦は頭を抱えた。それから、初体験は中学を出てすぐだったと話すと、わなわなと震えだし
 
 ……あいつ……と、小さく呟いたあと、あのセリフが出た。
『叩き切ってやる』と。
 
『あいつ』って事は、相手に面識があるのか?不審に思う俺に
 
「ああ、悪い」俊彦は落ち着きを取り戻してソファにドカッと座ると
「小百合、ヤバいだろ? あの見た目で、あの中身……」
 そう思うなら尚更、この男はなぜ彼女を見放したのだろうか。そう言ってやりたくもなったが、俺の次のステップは……本題は、そこではなかった。
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